review 書評
「ジャパン」はなぜ負けるのか―経済学が解明するサッカーの不条理―
挑発的なタイトルである。
本書もまた、昨今乱立する自国批判的でシニカルなサッカー本の一つだろうか。
答えはNOだ。
著者はジャーナリストのサイモン・クーパーと経済学者のステファン・シマンスキー。
海外のジャーナリストと経済学者が日本のサッカーについて書いた本だろうか?
答えはまたもNOである。
本書は決して日本サッカーについて論じたものではない。
視野は世界へ向き、サッカー界に当然のように存在する通説に経済学の視点から切り込む。
日本版の為に書き下ろされた章のタイトルがそのまま書名となっている。
イギリス版は「Why England Lose」(「イングランドはなぜ負けるのか」)、アメリカ版は「Soccernomics」(「サッカー経済学」)だという。ワールドサッカー好きの日本人はイギリス版やアメリカ版のタイトルを好みそうな気もするが、その点には目をつぶる。
本書のポイントは「経済学的に」サッカーが考察されている点である。
圧倒的な量のデータ収集による統計と分析が行われ、”Aという結果にはBという要素が強く影響している”という関係を導く。
例えば以下のような分析だ。
一国のサッカーの実力には以下の3つの決定的な要因が存在するという。
人口、国民一人当たり所得等国の経済的リソース、サッカーの経験値。
つまり、人口が多く、経済的に豊かで、国際試合の経験が豊富なチームは強い、と。
また、クラブチームと順位の関係においてきわめて有意なのは年棒だという。
クラブの総年俸が高いチームは統計的に順位が高い、という結果が導かれる。
他に、PKは不平等ではない、サッカーはビッグビジネスではない・・・といった説が展開される。
感覚的に違和感のある結果や考察もあるだろう。
しかし、学問の世界で王道の手法を専門家がサッカーに取り入れて導いた結果である。
アカデミックな世界と同様、驚きとともに納得するもよし、反論を自分なりに構築するもよし、である。
表現は平易に統一され、日本への提言や今後の世界のサッカーへ動向への示唆も含まれる。
経済学や統計学に少しでも造詣のある方はもちろん、普段とは違うアカデミックな角度でサッカーを眺めてみたい方に是非お勧めしたい一冊だ。
(石島啓太=文)
日本放送出版協会
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