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[準々決勝 スペイン×パラグアイ]時の流れゆく果てに
試合の終わりを告げる笛の音が鳴った時点で、ベスト4の顔ブレはウルグアイ、オランダ、ドイツ、スペインの4カ国となった。スタイルはそれぞれ微妙に異なるが、相手に対して能動的かつ攻撃的な姿勢を貫こうとする点においては同じである。
こうした性格を持つ4チームがムンディアルの準決勝に残ったことは素晴らしい。世界のサッカーの潮流だけでなく、この大会を見る世界の億を超える人間の精神にポジティブな影響をもたらすからだ。人の心に爽やかな風を吹き込むのである。
フェルナンド・トーレスの調子は本当によくない。トーレスの前線での鈍重な動きがそのままチーム全体の停滞へと繋がっていた。パラグアイの粘り強く守るというスタンスと相まって、試合そのものも停滞していた。
そのトーレスがセスク・ファブレガスに代わった後半11分から、試合は動き始める。後半12分にパラグアイがPKを獲得すると、次いで後半15分にはスペインがPKを獲得する。どちらのPKも失敗に終わったが、トーレスの交代自体が試合のスイッチを入れたことは確かだ。
その後シャビ・アロンソに代わってペドロが入ったが、これでピッチ上のスペイン代表11人のうち7人がFCバルセロナの下部組織、カンテラ出身となった。今大会のスペイン代表のメンバーを考えると個人的にはこのメンバーがベストだと思う。
ピッチの上に郷愁を持ちこむのは良いことではない。でも、一端ピッチを離れたら。かつてカンテラで寝食を共にした仲間、同じカンテラ出身の先輩、後輩と、今、遠い南アフリカの地でW杯を戦っている。人生とは何と不思議なものだろう。
カンテラで共にプレーし、今はそれぞれ違うクラブに所属するセスク・ファブレガスと、ジェラール・ピケが、南アフリカの夜に、宿舎でふとそんな会話を交わしているかもしれない。そしてセスクとピケだけでなく、プジョル、シャビ、ブスケツ、イニエスタ、ペドロ、といった面々も交えて、遠いあの日の記憶に思いを馳せているのかもしれない。
試合は後半37分、ビジャが決めたゴールが決勝点となり、スペイン代表が勝利した。ブスケツ、イニエスタ、セスク、シャビ、イニエスタ、とつないだボールを、ペドロがシュートしゴールポストに跳ね返ったボールを、ビジャが丁寧に押し込んだ。
遠くスペインはバルセロナでは、現在カンテラで寝食を共にする子供たちが、この試合の行方を見守り、カンテラを巣立った選手たちのプレーに目を見開いたに違いない。そして新たに記憶が紡ぎ出され、その記憶のもとに新たにプレーが生まれ、また新しい記憶が紡ぎ出されていくのである。
時の流れゆく果てに、黄金の杯が、見えてきた。
(本田千尋=文)







