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[全日本女子ユースサッカー選手権]準決勝進出に向けて鍵となった一戦
今月3日から8日まで千葉県市原市の3会場で行われた全日本女子ユース(U-18)サッカー選手権で、関西代表の日ノ本学園高が4位に入った。3位になった昨年度大会に引き続いての準決勝進出。2年連続ベスト4は紛れもない快挙である。
4チームずつの4グループに分かれる1次ラウンドから、各1位だけが準決勝に進める。ワールドカップやアジアカップのように上位2チームが決勝トーナメントに進出できる大会よりも熾烈な1次ラウンドが、この全日本女子ユースでは繰り広げられる。日ノ本のように2年連続で1次ラウンドのトップに立つのは、エリートクラブにしか成し得ない至難の業なのだ。
その日ノ本が1次ラウンドを勝ち上がるにあたって、鍵になる試合があった。姉崎サッカー場で4日に行われたDグループの第2戦、藤枝順心高との一戦である。藤枝順心も2008年度で3位、2009年度は4位、昨季は準優勝だった。日ノ本以上の実績を残した強豪が1次ラウンドで同居することになった。
3日の初戦で、日ノ本は松山東雲高に16‐0の圧勝を収めた。対する藤枝順心は湘南学院高に2‐1と接戦に持ち込まれている。得失点差で日ノ本が大きく優位に立った。この日ノ本×藤枝順心が1次ラウンド突破の大きな鍵を握る試合になることは間違いなかった。
先制したのは藤枝順心。前半4分、MF山田の左CKをMF榎谷がヘディングで決めた。早い時間帯から日ノ本は追う展開を強いられることになった。
藤枝順心はMF村山を中心に、長いボールを織り交ぜながら攻撃を仕掛けていく。日ノ本は相手の中盤をなかなかとらえきれない。
14分、日ノ本はFW寒川がドリブルで前進するが、榎谷がうまく対応してチャンスを作らせない。数分後に主将のMF正野が左からアーリークロスを放り込むが、ターゲットのFW川原の前でDF天田がクリアする。日ノ本の攻撃はまだ波に乗り切れなかった。
ロングボールを多めに使う藤枝順心の攻撃に、日ノ本のDFはラインを下げてしまう。また左サイドバックに入った中井は、元々がFWだったこともあって守備が不得手な選手だった。藤枝順心はその中井の弱点を容赦なくついてくる。24分、藤枝順心の右ウイング平野が中井を抜き去ってクロス。FW植村がワントラップでシュート。これはGK小高がキャッチした。その後も、日ノ本は中井の後ろを突かれてピンチを招くことが何度かあった。
後半キックオフ早々、日ノ本は左からMF長谷川がクロスを入れて、川原がDFの間を抜け出してシュート。これはGK前原がキャッチ。だが藤枝順心がカウンターから中井の後ろのスペースを突いて、後半開始から出場した右ウイングの葛馬がドリブル。そしてファーサイドにクロスが渡り、左ウイングの上嶋がシュート。こちらもGK小高が止めた。
8分には藤枝順心の植村が右からペナルティエリア内に進入してシュートするも、小高が弾いて防ぐ。その後も藤枝順心は中井の後ろを狙って攻撃を組み立てようとするが、途中出場のセンターバック川井がカバーなどでしのいだ。またもう1人のセンターバック北川も対人マークの強さや読みの鋭さを発揮して、藤枝順心の攻撃を食い止めた。
耐える時間が長かった日ノ本は15分、中央やや左から川原がドリブルを始める。そのまま進んでシュートを放ち、ゴールネットに突き刺して同点へ追いついた。
直後に逆転のチャンスが訪れる。17分、左から川原がクロスを上げる。ファーにいた寒川が折り返したところを正野がダイレクトでシュート。これは惜しくもバーを直撃する。27分には北川のFKから、ペナルティエリア内左にいた途中出場の吉田がヘディング。これは前原が抑えた。このようにして、徐々に日ノ本の攻撃が軌道に乗り出してきた。
だが日ノ本が不運に見舞われる。36分、川原がドリブルで一気にペナルティエリアに入る。前に出てきたGK前原が先にボールを収めるが、勢い余った川原は倒れて前原にぶつかってしまう。これがファウルの判定を取られる。それどころか、伊藤主審は川原にイエローカードを突きつける。6分前にも警告を受けていた川原は、これで退場となってしまった。
この様子を見ていたなでしこリーグの役員の一人は「何で今のプレーでカードを出すのか」と憤った。その通り、川原のこのプレーは決して悪質ではなかった。正確に言えば、川原は前原に対してただアクシデントのように接触しただけで、一切のファウルを犯していない。伊藤主審の判定は誤りだったのだ。にもかかわらず、日ノ本はさらに清水コーチが、判定に異議を唱えたとして退席処分を食らった。日ノ本は一転して逆境に追い込まれた。
だが残った10人の選手たちが動揺することはなかった。残りわずかの時間は藤枝順心にボールを思うように持たせず、1‐1のまま試合が終わった。淡々とした表情の日ノ本イレブンに対して、藤枝順心には泣いている選手も何人かいた。両チームの選手たちの反応の違いが、この試合の重みを表していた。
試合後、私は日ノ本の上嶋監督に「勝ちに等しい引き分けですよね」と水を向けてみたが「いやあ、まだ明日を戦わないとわからないですね。川原を使えないのが痛い」と慎重だった。
川原の退場に関しては上嶋監督だけでなく、退席処分を受けた清水コーチも納得できない様子だった。誤審なのだから当然だ。2人とも「(川原)選手がかわいそうやわ」と嘆いていた。
伊藤主審の残した後味の悪さにどんな影響をもたらされるかが心配された1次ラウンド最終戦は、日ノ本が湘南学院に3‐0、藤枝順心は16‐1でそれぞれ勝利。両チームが勝点7で並んだが、日ノ本は得失点差プラス19、藤枝順心はプラス16。3点上回った日ノ本が1位に立って、準決勝進出を果たしたのだった。
(文=添島一輝)
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