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[トップリーグ]繋がっていた気持ち
ラグビーの鼓動が聞こえる。
ドックンドックンと高鳴り続ける。
秩父宮は、波を打ったように静まり返っている。
時間が止まっているようだ。
電光掲示板のデジタル時計は、刻々と時を刻む。
残り時間は20分を切った。
二万人近い観客は、グランドから一瞬たりとも目を離さない。視線の先で、赤と青の選手が幾重にも折り重なっている。
この密集戦を制したのは、赤いユニフォーム、三洋ワイルドナイツである。司令塔は、芝生の上のボールを拾い上げる寸前の態勢のまま、わざと時を止めている。赤い列が後方にできていく。
密集戦に敗れた青のユニフォーム、東芝ブレイブルーパスの選手たちは、素早く後方に展開し、各々のポジションに散る。そして、狙いを相手司令塔に絞り、身構える。鋭い目は狼のようである。
糸がピンと張り詰める。
秩父宮が再び動き出そうとしている。
次の瞬間、ボールは拾いあげられ、スクリュー回転しながら真っすぐな放物線を描く。0-6とリードされた三洋ワイルドナイツの反撃開始である。
ボールが動き出すと同時に、青い狼たちの本能にスイッチが入る。正面にいる赤い獲物に向かって突進する。
歓声と共にあちこちで小旗がはためく。
鋭いタックルが決まったのである。
一週間前の準決勝、東芝ブレイブルーパスは前半を7-21とリードされながら、逆転勝利を飾った。ハーフタイムの境に、チームは生まれ変わったである。
決勝の二日前、その理由を聞いた時、トンガ出身のオト・ナタニエラは、流暢な日本語でこう話してくれた。
「サントリー戦のハーフタイムにきっかけとなるような、具体的な指示も、話し合いもない。チームが変わった理由は、気持ちだと思う」
ベンチの外で準決勝を見ていたカルフォルニア大出身のルーキー、エストレラ・大輔も質問に対する答は同じだった。
「オトさんが言っていた通り、気持ちだと思います」
決勝のキックオフ直後から、東芝ブレイブルーパス選手たちの出足は鋭かった。準決勝の後半からチームを変えた気持ちは、決勝まで継続していたのである。
6-0。
大逆転負けというドラマが起こりうる点差で、残り10分を迎えた。細い細い橋の上を、15人全員で渡っている。一歩でも踏み外したら、積み上げてきたすべてが台無しになる。
崩れそうだった。倒れそうだった。落ちそうだった。
だが、気持ちは最後まで切れなかった。
いくばくかの運に支えられ、ロスタイムを迎える。
二つの青いタックルが同時に赤いユニフォームを貫いた時、勝負は決まった。
見事な完封勝利だった。
2019年までラグビーの鼓動は止まらない。
●プロフィール
丹野 洋一郎(たんの よういちろう)
1977年7月生まれ。工学院大学機械工学部を卒業。現在は、郵便事業会社与野支店にて、期間雇用社員として勤務している。09年11月より金子塾に参加している。
タグ: スポーツライター登龍門 present by 「朝日日刊インサイト」, 日本一決定戦 —
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