スポーツライター登龍門 present by 「朝日日刊インサイト」
[全国ミニバスケットボール大会]ミニマムボーイズの冒険
小学生とはいえ身長が高ければ有利に違いない。長野には182㎝、長崎には177㎝、大分にも177㎝の選手がいた。そこまでの大物は稀だが、どのチームにも160㎝台の選手は必ずいる。
しかし、福島県男子代表の会津美里ミニバスケットボールスポーツ少年団には160㎝を超える選手がいない。一番高くて157㎝。平均身長は147㎝だ。それでも”ミニマムボーイズ”は全国大会へとやってきた。
「うちは小さい子の集まりなので普通に戦っても勝てないんです」
チームを率いる佐藤仁コーチは言う。
「正確な技術、スピード、ディフェンス力が重要です。そのためにミドルシュートをものすごく練習しましたし、何より走り込みを大切にしました」
佐藤コーチに鍛えられた選手たちは1試合目から躍動した。遠目からのシュートがどんどん決まり、ボールを奪ってからのカウンターも冴えた。71-38で大勝。続く2試合目も55-29で勝利し、2連勝で準決勝へと進んだ。
対戦相手は同じ”ミサト”の名を持つ高知の三里MBC。パワーが持ち味のチームだ。
「向こうは小さいけど激しく守備するチーム。個人でボールを持ちすぎるな。リバウンド勝負ならうちが有利だから狙っていけ」
三里の竹島コーチはミーディングで選手たちにそう指示した。
試合は序盤から会津美里のミドルシュートがことごとくリングに嫌われた。160㎝台の選手を4人揃える三里にルーズボールを拾われ、苦しい展開となる。前半は19-25とリードを許した。
「急ぎすぎてシュートミスが目立つぞ。慌てるな。守備は全員でもっと厳しく!」
佐藤コーチはつまり基本に立ち返ることを求めた。
後半に入ると、三里のプレッシャーがさらにきつくなった。会津美里のミドルは不安定なままだ。インサイドシュートは上から潰される。点差はいつの間にか12点にまで開いていた。だが、三里のスタミナも落ち始めていた。
相手のプレスが甘くなり余裕が生まれると、5番遠藤君のミドルが決まりだした。4番小林君のロングシュートはきれいな弧を描いてゴールへ吸い込まれる。
走り込みを大切にしてきた”ミニマムボーイズ”のバスケはここからが真骨頂だった。
三里のパスを6番長峰君が鋭い出足でカットし、シュートまで持ち込む。遠藤君のミドルはますます命中率が上がっていく。
だが三里はここから意地を見せ、突き放す。会津美里はまた追いかける。一時は1ゴール差まで詰め寄ったが、結局3点差の44-47で敗れた。
「君たちはすごいことをしたんだぞ。全国の小学生の中で一番最後の日までバスケットができたんだ。胸を張って帰ろうじゃないか」
最後の反省会で、佐藤コーチはすすり泣く子供たちに向かって精一杯の言葉をかけた。
背が低くとも通用するということを証明した会津美里。彼らの戦いぶりは大会に爽やかな風を運んでくれた。
●滝沢康英
1972年9月21日生まれ。ファッション誌のライターをするかたわら、スポーツ分野の書き手として勉強中。
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