スポーツライター登龍門 present by 「朝日日刊インサイト」
- コメント(2)
- 2010年7月7日
[ウィルチェアーラグビー]心に火を点けろ
コートサイドでは、小さい子供が黄色のビーチボールと戯れている。お父さんといっしょに、ボールを追いかけている。
コートの中では、まるで装甲車のような車いすに乗った選手たちが、ウォーミング・アップをしている。車いすのタイヤを回す手に力を込め、時に緩め、周回し続けている。それはまるでこれからレースを迎えるクルマを駆るレーシング・ドライバーのようでもある。
「チームを発足させるときに、チーム名を『虎一族』にしようかって考えた。俺、阪神ファンだからさ。でもそれじゃ暴走族みたいじゃないかってことになって。神奈川のチームで、そのときスタッフに慶應義塾の子がいたから、横濱義塾ってチーム名になった」
この日埼玉県障害者交流センターでは、2010ウィルチェアラグビー東日本リーグのRound1-2が行われた。参加チームは5チームである。Genesis、BLITS、AXE、BLAST、そして横濱義塾の5チームである。横濱義塾の監督の月村安孝さんは、6年前かからこのチームを率いる。
「他のチームのチーム名ってヨコ文字が多いでしょ。他のチームとの違いを出そうっていうのと、漢字だと、なんかこう気合いが入っている。気持ちって言うのかな。内面からかっこつけようってことで、チーム名を漢字にしたんだ」
試合が始まると、コートの中はさながら戦場となる。ウィルチェアラグビーではタックルはルールで認められている。車いすが衝突するたびにゴツゴツと大きな音が体育館に響き渡る。双方の選手とも、遠慮、容赦は一切ない。プライドとプライドが、激しくぶつかり合う。
「俺たちは、この競技をスポーツとしてやっている。遊戯でもないし、リハビリでもない。一般の人たちは、やっぱり偏見で見るから。障害者の人達が、こんなことできるの?って驚きの目で見る。偏見をなくそうとは思わないよ。偏見されるのはしょうがない。でも気持ちを込めて、ガチンコでやっている。ガチンコでやっていれば、何か変わるんじゃないかって信じてね。それで、もっと一般の人たちに見に来てもらえればいいかな」
試合中、ベンチに座る月村さんの声は一際大きく体育館に響き渡る。「ポジション、ポジション、ポジション」。「そこでもらっちゃっていいよ」。「来てるから、あたれ」。少し高く、透き通った声が、幾度となく響き渡る。
「やっぱり気持ちが一番だよね。成績云々じゃなくてさ。負けても一所懸命ならいいし、勝ってもダラダラじゃだめ。障害を持ってる人ってシャイな人が多いから。それもあって、やっぱり気持ちから」
そう言う月村さんは、選手たちに親のように接し、選手たちから親のように慕われている。インタビューが終わった際に、近くに来た所属2年目の山内さんに「ワリい、ヤマの悪口しか言わなかった」と言ってふざけあう姿は、仲の良い親子のようだった。
試合開始前、横濱義塾はチーム全員で輪を作る。輪の中心には、おどける月村安孝監督がいる。
月村監督を中心に、楽しげな笑い声が、辺りを包みこんでいく。
(本田千尋=文)
スポーツライター登龍門 present by 「朝日日刊インサイト」
タグ: スポーツライター登龍門 present by 「朝日日刊インサイト」 —
コメント(2)
- 木村 安虎2010年7月9日 11:14 AM
素敵な 文章 ありがとうございます^^
どうも、某義塾監督です。
また 何かございましたら、いつでもお気軽に、取材しにきてください。
- 本田千尋2010年7月11日 9:25 PM
>安虎監督
コメントありがとうございます。
そう言って頂けて本当に嬉しいです。
また取材させていただくことになりましたら、よろしくお願いいたします。







