スポーツライター登龍門 present by 「朝日日刊インサイト」

[ウィルチェアーラグビー]心に火を点けろ

 コートサイドでは、小さい子供が黄色のビーチボールと戯れている。お父さんといっしょに、ボールを追いかけている。
 コートの中では、まるで装甲車のような車いすに乗った選手たちが、ウォーミング・アップをしている。車いすのタイヤを回す手に力を込め、時に緩め、周回し続けている。それはまるでこれからレースを迎えるクルマを駆るレーシング・ドライバーのようでもある。
「チームを発足させるときに、チーム名を『虎一族』にしようかって考えた。俺、阪神ファンだからさ。でもそれじゃ暴走族みたいじゃないかってことになって。神奈川のチームで、そのときスタッフに慶應義塾の子がいたから、横濱義塾ってチーム名になった」
 この日埼玉県障害者交流センターでは、2010ウィルチェアラグビー東日本リーグのRound1-2が行われた。参加チームは5チームである。Genesis、BLITS、AXE、BLAST、そして横濱義塾の5チームである。横濱義塾の監督の月村安孝さんは、6年前かからこのチームを率いる。
 「他のチームのチーム名ってヨコ文字が多いでしょ。他のチームとの違いを出そうっていうのと、漢字だと、なんかこう気合いが入っている。気持ちって言うのかな。内面からかっこつけようってことで、チーム名を漢字にしたんだ」
 試合が始まると、コートの中はさながら戦場となる。ウィルチェアラグビーではタックルはルールで認められている。車いすが衝突するたびにゴツゴツと大きな音が体育館に響き渡る。双方の選手とも、遠慮、容赦は一切ない。プライドとプライドが、激しくぶつかり合う。
 「俺たちは、この競技をスポーツとしてやっている。遊戯でもないし、リハビリでもない。一般の人たちは、やっぱり偏見で見るから。障害者の人達が、こんなことできるの?って驚きの目で見る。偏見をなくそうとは思わないよ。偏見されるのはしょうがない。でも気持ちを込めて、ガチンコでやっている。ガチンコでやっていれば、何か変わるんじゃないかって信じてね。それで、もっと一般の人たちに見に来てもらえればいいかな」
 試合中、ベンチに座る月村さんの声は一際大きく体育館に響き渡る。「ポジション、ポジション、ポジション」。「そこでもらっちゃっていいよ」。「来てるから、あたれ」。少し高く、透き通った声が、幾度となく響き渡る。
 「やっぱり気持ちが一番だよね。成績云々じゃなくてさ。負けても一所懸命ならいいし、勝ってもダラダラじゃだめ。障害を持ってる人ってシャイな人が多いから。それもあって、やっぱり気持ちから」
 そう言う月村さんは、選手たちに親のように接し、選手たちから親のように慕われている。インタビューが終わった際に、近くに来た所属2年目の山内さんに「ワリい、ヤマの悪口しか言わなかった」と言ってふざけあう姿は、仲の良い親子のようだった。
 試合開始前、横濱義塾はチーム全員で輪を作る。輪の中心には、おどける月村安孝監督がいる。
月村監督を中心に、楽しげな笑い声が、辺りを包みこんでいく。

(本田千尋=文)

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コメント(2)

木村 安虎2010年7月9日 11:14 AM 

素敵な 文章 ありがとうございます^^
 どうも、某義塾監督です。

 また 何かございましたら、いつでもお気軽に、取材しにきてください。

本田千尋2010年7月11日 9:25 PM 

>安虎監督
  
  コメントありがとうございます。
  そう言って頂けて本当に嬉しいです。

  また取材させていただくことになりましたら、よろしくお願いいたします。

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