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誇りたい代表

 喜びと期待を同居させた松木安太郎の声が、スピーカーから弾き出る。
「闘莉王があがりましたよ。」
 続いて実況の進籐潤耶が、興奮を懸命に抑制しながら視聴者に説明を始める。
「闘莉王が今、最前線まであがりました。闘莉王がワントップのポジション。阿部が最終ラインに下がりました。」
 後半43分、0-1のスコアの時だった。日本代表にとって、喉から手が出るほど1点が欲しい状況だった。岡田監督は後半15分に中村、31分には玉田と岡崎を投入している。交代のカードはもう無い。総攻撃を仕掛け、日本代表は攻めていた。それでも、オランダの陣地で攻めあぐねていた。
 最後の手段だった。
 闘莉王は、あがった。
 オランダの猛攻に耐え続けていた城壁は、最前線へと移動した。ゴールの可能性を数パーセントでもあげるために、前線に闘う場を求めた。闘莉王とて疲労がなかったわけではない。世界でもトップ3には入るであろうオランダの攻撃を前半から受け続けていたのである。それでも、前にでた。1点を取るために、前にでた。
 進藤は日本中が知りたがっている事実を冷静に代弁し始める。松木は知りたくてもまだ判明しない、もどかしい胸中を吐き出していた。
「まもなく、まもなく90分。90を経過します。」
「ロスタイムは?」  
「日本に残されている時間はどれくらいになるのか。」
「ロスタイム何分ですかね?」 
 ピッチ上では、試合途中から右サイドバックへとポジションを変えた長友佑都が、柔らかいクロスをあげていた。ボール行く先には、闘利王がいた。闘莉王はヘッドでボールをボールの軌道を変える。ペナルティアリアの無人スペースに行き着いたボールに、岡崎が飛び込み、左足を振りぬく。
 松木は叫んだ。
「よし、チャンスだ。岡崎、行け!打て!」
 そして、嘆いた。喉元から来る、嘆きだった。
「あーーー。」
 ボールはバーの上を越えていった。
 オランダは、逃げ切ることしか頭に無かった。ボールを保持し、出来るだけ時間を稼ぐことに全力を注いでいた。デヨングからボールを受けたマタイセンは、ゴールキーパーのステケレンブルグにバックパスをした。
 闘莉王はボール追った。疲労はある。奪えないかもしれない。それでも、頭を下げて全力で追っていった。猛然と走っていった。守備に翻弄されていた男が、一点をとるために、攻めていた。
 闘莉王の姿が、日本代表全ての選手の意思を明確に表現していた。
 ステケレンブルグは、慌ててボールを前線にフィードした。ロスタイムは3分だった。
 日本代表は諦めていなかった。
 自陣右サイドでボールを受けた玉田が、相手に囲まれながらもボールを前方のスペースに出す。ボールはペナルティエリアに進入していた。ゴールラインを切るかどうか。後方から長友が走りこみ、デヨングとボールを奪い合う。
 デヨングがボールの前に立とうした。走るスピードを抑える。しかし、長友は回りこむ。ボールは長友の足元へと収まった。そして、長友は倒れた。
 主審のバルダッシはペナルティエリアで手を前方に差し出す。
 実況席は爆発した。 
「PK!」
 進藤は声を裏返し、希望を叫んだ。
「ニッポンにPKだ!」
 しかし、ペナルティエリアで主審の前に位置していたファンボメルは、親指を立てて主審を称えたいた。
 判定は、ゴールキックだった。
 日本中が、天を仰いだ。これが、最後のチャンスであった。
 
 
 
 
 0-1だった。日本はオランダに負けた。負けたのである。しかし、前に出て、点を取るために攻めていた。カメルーン戦は、W杯後に使うことの無い極めて消極的な本田圭佑のワントップだった。最初から、点をとるためのサッカーではなかった。
 だが、オランダ戦は違った。1点を奪われた後、日本代表は点をとるために、攻めた。
なりふり構わず前に突撃した。その間オランダ代表は何をしたのだろうか。2回のカウンターアタックもしっかりと川島が止めた。そして、カメルーン戦でも当然同じようにできたはずである。
 点はとれなかったが、この試合が日本の実力だと思う。最後まで諦めず、最後まで闘った。後半は前から守備をして、攻撃を繰り返した。この戦いをみて、胸を打たれない人はいない。特に闘莉王である。彼は本当に素晴らしかった。でも、結果が全てなら、彼らは批判されるべき対象なのか。
 この試合を日本人として誇りに思いたい。
 最高の敗戦だった。 
  
(西本匡吾=文)
 

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コメント(12)

ジャスミンティー2010年6月20日 11:16 PM 

西本さんのコラムを拝見しました。金子塾の塾生の方ですね。師匠の教えをしっかり守って西本さんの夢が実現できるといいですね。応援しています。
今回のコラムを拝見しましたが、これではテレビを観た感想文で読者に伝わらないと思います。厳しい指摘をさせていただきますと。恐らく、西本さんと同じように思っている人は多くいるはずです。西本さんはサッカー経験やJリーグ、欧州リーグ、チャンピオンズリーグの中継、観戦をどれだけされているのかわかりませんが西本さんなりの視点をもう少し増やした方がいいと思います。

ヤマケン2010年6月21日 1:03 AM 

ワールドカップ以外でサッカー見たことあります?
カメルーン戦でも同じようにできたはずって何故勝ってるチームがリスクを冒して攻めないといけないの?実力で劣っているチームならたいていあーやって守りにはいるよ。川島が止めたシーンも入れられててもおかしくはなくカメルーン戦で同じ様な事をして決められてたらそれこそ目も当てられないよ。
オランダ戦だって負けてたからリスクを覚悟して攻めてたんだし。もし先制点取ってたら絶対に引いて守りに入ってたと思う。
あなたは攻める、勝ってても攻める、退場者出しても攻める、とにかく攻める、そんなサッカーじゃないと満足できないの?
サッカーの事を書くならもっとサッカーの事を知ってからにしたほうがいいかと・・・

じょーじ2010年6月21日 3:07 AM 

まず、読み物という側面からすると厳しい事を言うかもしれないですが、記事の大半を占める状況説明の文章は一体何の意図があって書かれたのでしょうか?もしかして、お師匠さんのスタイルのモノマネ?

一つのシーンを事細かに表現する文書スタイルは、あくまでも関係する当事者にきちんと取材をして、我々読者がその瞬間に知る事が出来なかった本人の心の動きや状況の緊迫感を表現するからこそ、文章にリアリティや緊張感が生まれて読み手の心を掴むと思うんです。

しかしながら今回書かれた内容はTVの中の映像を切り取っただけで、しかも筆者の主観や憶測も混じっているので、ノンフィクションの持つリアリティが感じられませんでした。また、後半の文章への繋げ方も稚拙なので、尚更この文章が奇怪に映ってしまってますよ。

また、後半の文章については、前回と今回の内容で明らかに矛盾がありますが、それは理解した上で書かれた文章なんでしょうかね。少なくとも僕には前回筆者が完全に否定した「勝ったからいいじゃん」という思考と、今回「頑張って攻めたから負けたけどいいじゃん」という思考。その根本が何がどう違うのかが良くわからなかったです。なりふり構わず攻めた事に胸を打たれるんなら、勝つ為になりふり構わず守る事にも胸を打たれるはずです。闘う姿勢はどちらも同じです。

それに、前回の文章で一番問題としていた部分は、カメルーン戦のサッカーでは日本の未来のスタイルの指針にならないという事だったはずですが、それは選手が攻撃に力を入れれば解消するような簡単なものだったのですか?僕にはあの40分間で日本の未来のスタイルはとても見えませんでした。

オランダ戦を見た日本人のほとんどが、選手は頑張ったと思っているはずです。ただ、負けた事に対して非常に悔しいとも思っているはずです。だからこそ、次に向かって何をどうすればいいのかという反省と分析を行い、進化して行く事が筆者のいう「日本のサッカー」を作る要因になると思いますよ。

まさか、筆者がここに来て典型的日本人の思考を持ち出してくるとは夢にも思っていませんでした。

ぶー2010年6月21日 9:39 AM 

勝ったときは否定して、負けた時は絶賛。
天の邪鬼にしてれば面白いと思ってるのでしょうか。

確かにカメルーン戦に比べたら内容は良かった。
でも仮に1-1で引き分けていても最終戦のデンマーク戦は引き分け以上の結果が必要なことを考えると、1点を狙いにいくのではなく1点を守りにいくべきだったと思います。
川嶋のスーパーセーブがなければ最悪3-0。
3-0になっていたら最終戦は「勝利」が必要になっていたわけで、この差はかなり大きいと思います。

結果的に追加点を取られなかったから闘莉王の攻め上がりは良かったですがあくまで結果論。
西本さんが初戦のカメルーン戦の後に投稿で批判されていた「結果」だけが良かったということになりますよ。

それにその前回の投稿であれだけの人にコメントをもらったのにそれに対するレスはなにもないのですか?
自分の考えを投げっぱなしであとは知らないというのならただの日記です。
すべてのコメントにレスをしろとは言わないですが、自分の考えがあるのなら何らかのアクションが出ると思うのですが・・・

同じくここに投稿されている本田千尋さんはきちんとコメントに対して返してくれているのですごく好感がもてます。
西本さんもがんばってください。

プー太郎2010年6月21日 11:58 AM 

あなたの記事を読ませていただきましたが、これはコラムでは無く、実況の感想文ですよね。
小・中学生がアトガキだけを見て読書感想文を書いたような薄っぺらいもの。
プロを目指している方なら、もっと違う視点で書くべきでは?
表面だけを切り取っただけでは引き付ける魅力はありませんよ。
あと、個人的には前回のコラムと繋がりが無いのはどうかと…。
前回書かれた「何も残らないサッカー」とまったく逆ですよね。

cipher2010年6月21日 1:03 PM 

正直開いた口がふさがらない状態です…
一言だけ言いたい。

「あなたのサッカー観は一体どういうものなのですか?」

                                   以上

T2010年6月21日 1:25 PM 

テレビの実況をまんま書くのはどうかと思います。
テレビの前で座って書いた、もしくはVTRを観ながら書いた風にしか見えません。

そのあとの本田のワントップのくだりもよく意味が分かりません。もっと言葉があっても良かったんじゃないですか?

サッカーの記事を書くなら、もっとサッカーを好きになってください。ここを読む人たちは本当にサッカーが好きな人達だと思います。そういう人達の眼はごまかせないですよ。

ゲイン2010年6月21日 9:41 PM 

前稿の際、ぶしつけながら質問をさせていただいたものですが、
その質問には答えていただけないようなので、
いちスポーツファンの私見を言わさせていただきます。

勝ったら嬉しい!!
負けたら悔しい…
それがスポーツの根本だと思います。
最善の結果を得るために全力でプレーするフェアプレーはスポーツの原理です!!

再び喜びを得るために頑張るし、
同じ悔しさを味わいたくないから努力する、
その結果、成長していくのではないでしょうか?

そして、全力のフェアプレーに心打たれ、
多くの人が悔しさを共有し、喜びを分かち合うことで
スポーツが大衆の文化として発展してきたのではないでしょうか?

確かに、素直に喜べない勝利もあります。
敗戦のなかにも誇らしいと思えることもあります。

しかし、勝利を素直に喜ばない…敗戦を必要以上に称える…
それは、スポーツの魅力を捻じ曲げる行為ではないでしょうか?

時にスポーツジャーナリストは、
スパイスのように隠された真実や逸話をブレンドしてくれます。
それは、勝利の喜び、敗戦の悔しさに深みを与えてくれます。

今あなたがやっていることは、どうですか?

勝利の味を引き立てられていますか?
敗戦の苦々しさを味わい深いものにできていますか?
あなたの文章を読む読者の姿が見えていますか?
あなたは、誰に向かって自分の言葉を発していくんですか!?

未だ修行中の身という言い訳もできるかもしれませんが、
こういったところに公開する以上、プロ予備軍としての自覚があるものと思い、
厳しいことを言わさせていただきます。

前稿、本稿に書き綴られたコメントは財産です!!
逃げてはだめです!!
コメントに対して嬉しいと思って、悔しいと思って、努力してください!!
がんばれ西本!!

たにさよ2010年6月22日 11:52 AM 

ちょっと厳しい言い方になりますが、これはみなさんが言っておられるとうりあまりサッカーを知らない人のただの感想文にしか見えません。
あの状況で闘莉王が上がるのは、Jリーグでも頻繁にみられる彼のプレースタイルですよ。サッカー好きなら誰でも知って、いてそれほど感激することとは思えません。
むしろあの0-1と言う状況で、オランダに対して闘莉王を含めてどの程度効果的な攻撃が出来ていたのか、いなかったのかを評価すべきです。
それを考えるとカメルーン戦の一勝がいかに価値があるかわかるはずです。
とにかくもっと試合を数多く見てそれから文章を書いてみてください。

AirManiax2010年6月22日 8:50 PM 

サッカーに精通していないことは罪じゃないし、精通していないからと言って書く資格が無いとも自分には思えないです。

自分がよく知らないということを自覚して、そのうえで謙虚に書かれた記事のほうが、中途半端な知識を振りかざす輩よりはよっぽど気持ちいいと思うのです。

私があなたに期待することはひとつです。
あなたの師匠のさらに師匠のセルジオ越後さんがいつもおっしゃっている「記者は父親なんだ」という気持ちとともに原稿に取り組んでいただけたらと思います。

金子達仁さんの記事も色々なところで叩かれていますけど、根本的なところで「自分は日本サッカー界の父親なんだ」という思いがあるように私は受け止めています。

あなたはどうですか?

他の塾生を差し置いて顔写真やプロフィールを公開されているということは塾生の代表として金子さんから期待されているということでしょう?

小手先の技術や下手な知識なんてどうでもいいです。

根本的な「金子イズムの継承者」であることを証明するような記事を書いていただきたいと思います。

あなたにはできるのだと期待している人がいるのですから、ぜひ期待に答えるような取材をして、記事を書いてください。

私も期待しています。
西本さん。

AirManiax2010年6月22日 9:09 PM 

ひとつ付け加えておきたいことがありました。

このコメント欄を使った返信なんて、やめて下さい。

秋葉を主戦場にするアイドルとか選挙直前の政治家じゃないんですから、自分を変な方向に安売りするのはやめて欲しいです。

素のあなたのコメントなんて興味ないし読みたくもないです。

みんなを唸らすような記事を書いていただければ、それなによりの返信だと、ちょっとしたファンの一人として思います。

Hiroshi2010年6月24日 12:28 PM 

前半いらね。あなたホント野暮だわ。
いちいち説明してもらえないくてもテレビで見ました。
最後の9行だけでいいよ。

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[塾生]西本匡吾
kyougo_nishimoto
1987年9月生まれ。明治大学法学部在学。現在4年生ながら、新聞社から内定をもらうため就職浪人を決意する。金子塾入塾後は「とにかく現場に出ること」を意識し、スポーツの種類にとらわれず取材を行っている。将来はバスケットボールについて執筆し、日本バスケの発展に貢献したいと考えている。

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