[塾生]三浦敬介

  • 2011年12月21日

[JAPAN X BOWL]NFLに最も近い男


 まさに木下の木下による木下のための試合だった。

 12月19日、東京ドームで行われた社会人アメリカンフットボール日本一決定戦“ジャパンエックスボウル”。オービック・シーガルズのワイドレシーバー木下典明は、僅か3つのプレーでスタジアムを彼のワンマンショーの舞台へと変貌させた。かつてNFLに一番近いと評された男は、現在でもNFL級のスピードとテクニックを維持し続けていることを自らのプレーで証明してみせたのである。

 最初の衝撃は唐突に訪れた。第3Qの10分16秒、シーガルズがフロンティア―ズに10対3と7点のリードを許した直後の出来事だった。フロンティア―ズのキックオフ。右サイドのリターナーに入っていた背番号18は、自陣のゴール前でボールをキャッチすると、常識ではタッチバックを選択する位置から果敢にリターンを試みる。目前の密集を華麗なフットワークで斜めに切り裂いて左サイドへと流れると、異次元のスピードで98ヤードを走り切った木下。フロンティア―ズDF陣を置き去りにして彼の姿は、一瞬の内にエンドゾーンの中へと移っていた。
モノが違う・・・。このタッチダウンで1点差まで詰め寄ったシーガルズ。彼のビッグプレーでフロンティア―ズに傾いていた流れは一瞬にしてシーガルズ側へと移った。

 第2幕の開演は第4Qの4分30秒。この日2つ目のタッチダウンはスピードよりもテクニックが際立ったものだった。ゴールまで残り10ヤードの地点で右のアウトサイドにポジションを取った木下は、QBからのヒッチパスをキャッチするとインサイドのレシーバーをリードブロッカーに使ってエンドゾーンへと迫る。華麗なステップで前進した木下は、易々とエンドゾーンまでボールを運んだ。
フリーでボールを受ければ、彼を止められるディフェンダーはいないと思わせる走りで、シーガルズは遂に15対10と逆転に成功した。

 そして3度目の見せ場は第4Qの6分35秒。規格外の暴君は、自陣34ヤードからの縦パス1本で対面のCBをいとも簡単にぶっちぎる。レベルの違いを見せつけてフロンティア―ズDF陣を蹂躙した18番は、この日3つ目のタッチダウンを奪い24対10。チームの勝利を決定づけた。
 試合後、満場一致でジャパンエックスボウルのMVPに選出された、かつてNFLに最も近いと言われた男は、自分が過去の人間ではなく、現在も進化中であることを自らのパフフォーマンスでアピールして見せた。
「観戦に来てくれた皆さんの期待に応えられたかはわかりませんが、今日はやっとビッグプレーをお見せすることができました」
 MVP男は自信に満ち溢れた表情の中に、試合中とはまるで別人のような人懐こい笑顔を浮かべた。一時の不安説をこの試合で完全に払しょくした感のある木下典明。NFLでプレーする最初の日本人は、やはり、この男以外には考えられない。

[塾生]三浦敬介



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