スポーツ感動体験
走り抜けた青春
奈良県の高校ラグビーにおいて、天理高校と御所実業は永遠のライバル。
御所に所属するF君の高校生活はまさに”打倒天理”の3年間だった。
高1からレギュラーを掴み、花園行きをかけた全国高校ラグビー奈良県予選の決勝戦で、F君ははじめて天理と対峙する。だが8-19で敗退した。
高2となり、ラグビー部はいっそう強化され、近年稀にみるハイレベルなチームに仕上がった。F君は主軸に成長していた。
しかし予選1カ月前の練習試合中に、F君に悪夢が襲う。後半残り5分、相手のタックルを受けた瞬間、今まで感じたことのない激痛が右足に走った。
右足首骨折。全治6カ月。
「めっちゃ悔しい、めっちゃ悔しい…」
F君が病院のベッドで涙に暮れる中、両校は再び決勝で激突する。
主力を失った御所だが、それが逆に結束を強めることとなり、気迫で天理を圧倒した。33-12。歓喜に沸くチームメイト。F君はみんなを称えつつも、心の中では無念さが渦巻いていた。
手術から1カ月半後、一人グラウンドを走るF君。
誰もが長期離脱と思っていた中、本人だけが全国大会に出る気でいた。ボルトの入った右足首は驚異的な回復をみせ、本当に出場することができたのだ。
F君が合流したチームは「御所旋風」とまで呼ばれ、全国大会準優勝にまで駆け上った。
高3になり、F君はキャプテンになった。
だが、練習中にまたしても怪我に見舞われる。
左膝十字靱帯断裂。
「なんで俺ばっかりこんな目に…」
F君の気持ちは折れかけた。しかしそれを支えたのが、”打倒天理”を自らの手で実現させるという執念だった。
「手術したら間に合わん」
F君は手術を回避し、左膝をテーピングで固めてプレーすることを選んだ。
向かえた奈良県予選。御所は順当に勝ち上がり、決勝で天理と相対する。
試合はF君のトライで御所が先制した。しかし後半に逆転を許す。
万事休すと思われた試合終了直前、御所がペナルティキックを得て、同点に追いついた。
10-10の両校優勝。だが、花園へ行けるのは1校のみ。同点の場合、トライ数の多いほうが切符を手にするが…それも同じ。となるとキャプテン同士のくじ引きとなる。
二人のキャプテンが別室に呼ばれた。チームメイトは固唾を呑んで待機する。
しばらくして強張った表情のF君が部屋から出てきた。
チームメイトの顔を見た途端、頬を緩ませる。
「よしゃ!」
F君にとっての天理撃破は運頼みになったが、満身創痍だったことを思えば十分だった。この年、チームは全国ベスト8まで進んだ。
大会後にF君は右足首と左膝を手術した。現在は大学に進み、復帰に向けてリハビリに専念している。
(滝沢康英=文)
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