[塾生]丹野洋一郎

  • 2011年3月1日

[特集]FC東京の人柄/FC東京強化部・浅利悟


「ずっとサッカーを続けたいと思っていました」

 大学を卒業し、東京ガスフットボールクラブに声をかけていただいた時に、私の社会人としてのサッカー人生が始まりました。
 東京ガスフットボールクラブは、今のFC東京の前身で、私が加入した当時は、JFLという社会人リーグに所属していました。
 社業とサッカーを両立しているにもかかわらず、チームのレベルは、非常に高くて、常にリーグ戦では上位クラスを争っていました。
 実際、すごく強かったと思います。
 卒業してからも、ずっとサッカーを続けたいと思っていましたから、東京ガスの社員として、東京ガスフットボールクラブにお世話になろうと決めました。


「具体的な働きかけは、ありませんでした」
 
 私が加入した2年後の99年に、チームはFC東京に名前を変えて、J2に参戦することになります。そして翌年、J1に昇格しました。
 その時は、嬉しさがものすごくありました。さらに高いレベルでサッカーが経験できるという嬉しさですね。
 チームは、J2参戦をきっかけに、プロのクラブへと変わっていくわけですが、私は東京ガス社員のまま、サッカーを続けることにしました。
 その頃の選手で、チームがプロになるから、
「じゃあ俺も、プロになろう」
という選手はいなかったと思います。
 会社からも、プロになることを進めるような具体的な働きかけはありませんでした。


「プロであれ、会社員であれ」
 
 会社は、私にサッカーだけに集中できる環境を作ってくれました。
 JFLの時は、オフ明けに、週1、2回、午前中だけ会社で仕事をする、というのがありましが、FC東京になってからは、ほんとにサッカーだけをやればいいという環境に変わりました。
 だから僕の中では、プロであれ、会社員であれ、同じ土俵でやっているという意識が強かったです。周りが騒ぐほど、社員だとか、プロだとか、という差は感じませんでした。 
 その分、会社との繋がりは薄くなってしまいました。
 同期の社員とは、たまにご飯を食べにいったり、連絡を取ったりしていました。体育会系の仲間が多かったですね。
 でもそのうち、それぞれがいろんな勤務地に散って働くようになります。そうなると、どうしても連絡する回数が減ってきてしまいます。自然に同期との繋がりが減ってしまい、次第に会社との繋がりも薄くなってしまいました。


「葛藤がありました」

 プロは、基本的に一年契約です。私は、厳密に言えばプロではなく、プロと同じ環境に身を置いた社員選手でした。
 よく、
「引退した後、会社に戻れるからいいですよね」
と思われるのですが、それは違うと思います。
 仮に37歳で引退したとして、会社に戻ったとしても1から仕事を覚えなければならない。今までサッカーしかやってこなかったわけですから。
 何もできなかったら、会社から必要ないと言われることもありえると思います。
 だから、周りの人から「社員だからいいよね」って言われるたびに、葛藤がありました。
 でも、だからこそグランドの上に立ったら、プロ選手以上に責任あるプレーをしなければならないという気持ちでやっていました。
 レギュラーで試合に出ている時は、「来年もやれるだろう」と思っているので、引退後に会社に戻ることを意識したことはありませんでした。
 けれど、膝を怪我してしまった時や、試合に出られなくなってきた時には、どうしても引退後の 生活を真剣に考えざるを得ません。
「来年は厳しいかな」と。


「帰ってこい。一回、東京ガスに帰ってこい」

 09年に35歳で引退しましたが、私の希望としては、クラブに残りたいと思いました。残って自分を育ててくれたクラブをもっといいチームに、もっと魅力あるチームに、もっと強いチームになる手助けをすることで恩返しをしたいと思いました。
 そして、できることなら13年の経験をいろんな人に伝えたいと思いました。子供たちや、中学生、高校生にサッカーを教えたいという想いです。
 けれど、それは会社の人事の問題です。
 私は、東京ガスの社員でしたので、自分の希望が通るとは限りません。
 東京ガスの鳥原会長に引退の報告した時に、
「帰ってこい。一度、会社に帰ってこい」
という言葉をいただきました。
 鳥原会長は以前、東京ガスフットボールクラブの部長をやっていた方で、大変お世話になった恩人です。
 それから、加入してから引退までずっと選手としての自分を見ていてくれた、鈴木強化部長(現:指定管理者業務部部長)からも、
「一度会社に戻って、社会人として自分を高めてから、またクラブに帰ってくればいいじゃないか」
という助言をもらいました。
 鳥原会長も鈴木強化部長(現:指定管理者業務部部長)も、一度会社に戻った方がいいと言ってくれています。
 人生の先輩であるお二人が仰ってくれた言葉に、間違いがあるはずがありません。
 でも、自分の気持ちはクラブ残りたい。
 サッカーに携わっていたい。
 だから、本当に、本当に、悩んで、悩んで、……すごく悩んで……。


「どうしてもクラブに残って仕事がしたい」

 最終的には妻とも相談して、クラブに残りたいという気持ちを優先しようと思いました。
 少しでも知識があるサッカーという環境の中で、一応は顔を知ってもらっているFC東京のスタッフに助けてもらい、今までの経験を活かせる仕事をしたいと思ったのです。
 その根本にあるのは、FC東京を、もっと強く、もっといいチームにしたいという気持ちです。
 だから、FC東京の村林前社長に、FC東京の人たちと仕事がしたい、どうしてもクラブに残って仕事がしたい、チームが強くなるための手助けをしたい、という気持ちをお伝えしました。
 村林前社長は、私がクラブに残れるようにと、東京ガスとの間に入って、なにからなにまですべての段取りを引き受けてくれました。
 そのお陰で、私は今、FC東京に残って仕事をさせてもらっています。
 だから、村林前社長には本当に感謝しています。
 もちろん、何もできない私に会社に戻ってこいと言ってくれた鳥原会長、親身になって助言をくれた鈴木強化部長(現:指定管理者業務部部長)にも、同じく感謝しています。


「路頭に迷った人はいないと思います」 

 鈴木強化部長(現:指定管理者業務部部長)が親身になってくれたのは、私だけではありませんでした。
 引退した選手はもちろん、契約を切らざるを得なかった選手の次の仕事場を、本当に親身になって探し、用意してくれました。
 ありとあらゆる繋がりを駆使して、サッカー関係の仕事から、サッカー以外の仕事まで紹介してくれました。
「彼はあのチームに行って、彼は普及コーチになって……」
という具合に、鈴木強化部長(現:指定管理者業務部部長)は、あちこちに奔走してくれていました。
 選手だけではありません。
 スタッフやトレーナー、さらには違うチームに移籍した選手についても、気にかけてくれていました。
 だから、私の知っている限りでは、うちのクラブを経験し、契約が切れてしまった選手やスタッフの中で、路頭に迷ってしまったという人はいないと思います。
 FC東京というクラブは、セカンドキャリアに関して、十分にバックアップしてくれるクラブだと、私は思います。
 私も含めて、FC東京というクラブを愛する選手やスタッフが多い理由は、鈴木強化部長(現:指定管理者業務部部長)のような方々がクラブを支えているからだと思います。


「必ずどこかで誰かが見てくれていると思います」

 人柄とか日頃の行いが、最終的には引退後の生活に繋がると、私は信じています。
 誰なのかはわかりませんが、絶対にそういう所を見ている人たちがいると思っています。
 もし、引退後に子供たちにサッカーを教えたいと思うなら、ただ、サッカーがうまければいいというのは、違うと思います。
 それよりも、むしろ人柄とか日頃の行いとか、そういう事が大事なんだと思います。サッカーのうまさよりも、まずはそこだと思います。
 どんな結果になっても努力を怠らずに、継続できる人は、必ずどこかで誰かが見てくれていると思います。
 私が、引退後もサッカーに携わる仕事に就けたのは、いろんな人の助けがありました。
 だから、感謝して、お世話になった人のためにも成長しなければならないと思っています。

「なかなか真剣に考えることはできませんでした」
      
 私は、プロ選手ではなかったので、偉そうなことは言える立場ではないのですが、プロスポーツというのは、引退後の生活に向き合うことが絶対について回るものだと思います。
 けれど、実際は「考えなきゃ、考えなきゃ」とは思うのですが、現役の時は、なかなか真剣に考えることはできませんでした。
 やはりどうしてもサッカーありきの生活ですし、考えたとしても手につきません。
 でも、時間はたくさん作れます。
 練習時間は2、3時間で、あとはフリーになれますから、セカンドキャリアに向けての準備は、時間的には可能だと思います。例えば、パソコンであったり、語学を学習したりすれば、間違いなく自分のプラスになると思います。
 ただ、目標が定まらない限りは、なかなか取り組めないと思います。何をやりたいのかが明確にならないと、いくら時間があっても引退後の生活に向き合うのは難しいのではないでしょうか。
実際、私も現役の時にもっとパソコンに触っていればよかったと思っています。
 今の仕事は、パソコンが手放せませんので。


「家に帰ったら、家族を大事にしたいと思っていました」

 現役時代は、次の日の練習のことを考えて生活するのは当たり前で、サッカーにマイナスになるようなことは絶対にしません。
 けれど、24時間サッカーのことだけを考えていたわけではありません。
 十分な睡眠や食事を怠ってはいけないとは思いますが、それ以外の時間をサッカーから切り替えてしまっても、グランドでのパフォーマンスの低下に繋がることはないと思います。
 私は、家に帰ったら、家族のことを大事にしたいと思っていました。
 難しい部分はあるかもしれないですけれど、自分のプラスになることを身に着けることに、越したことはないと思っています。
                                 
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[塾生]丹野洋一郎



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